「 ジェノサイド 上 」著:高野 和明 (角川文庫)


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「 ジェノサイド 上 」著:高野 和明 (角川文庫)紹介してくれた、“アイリスさん”のお話を聞いて。


 

ジェノサイド=大量虐殺。この言葉を聞いて、最近観た「アクトオブキリング」という映画が連想された。

 

 

1965年にインドネシアにて100万人以上が殺害された。その行為に携わった人達を取材し、虐殺の様子を演じてもらうことで成立した、いままでにあまり観たことがないドキュメンタリー映画だ。

1000人以上殺したと語る、アンワルという人物を中心にして描き出される。虐殺した加害者が、虐殺をされた被害者を演じるということで、彼はPTSD(心的外傷後ストレス障害)のような状態になり良心の呵責が生まれる。人間は実に複雑で、理解しがたい怪奇さを持ち備えている。それを誘発させるものは、抗い難い、社会状況だろう。そこにどのように加担し、振る舞うか。そして、なぜ人間は人間を殺すことが出来るのか。複雑怪奇な現象を考えさせられた。

これが、ジェノサイドで連想したもの。

いま、この本を三分の一ばかり読み進めたのだが、そこで分かったことだがある。ここでのジェノサイド(大量虐殺)を誘発させるものとして、“未知なるウィルス”そして、何かを予見している“ハイズマンレポート”と呼ばれるものがポイントとなりそうだということ。

実際、紹介してくれたアイリスさんも、ハイズマンレポートなる世界の謎を含んだものの存在がキーポイントだと言っていた。さらに、最終的には“誰となんのために戦うのか?”という解決しそうにない壮大なストーリーが展開されるそうだ。

さて、また連想したことについて書きたい。その引き金となったのが、“未知なるウィルス”。これは、1960年代~1970年代にかけて、量産されたディストピアSFで多く描かれてきた。

なぜ、この時代に量産されたのか。

それは当時のアメリカの社会状況が反映している。この時代を知るために過去にさかのぼることが必要だろう。

このことについて、【オバマショック 著:越智道雄・町山智浩 集英社新書(2009)】でくわしく書かれていたので、以下にまとめてみた。

1929年、大恐慌が起こる。その原因として当時のフーヴァー大統領がアダム・スミスの古典的自由主義を信じ市場に一切、介入しなかったことが挙げられる。さらに大恐慌後もそれを信じ「神の見えざる手」が何とかしてくれるだろうと市場を放っておいてさらに悪化してしまった。

そこで登場したのがフランクリン・ルーズベルト大統領。彼はニューディール政策の名のもと、ケインズ理論にもとづいた政府による積極的な市場介入を行った。公共事業による雇用創出、規制強化、福祉拡大。これが後の民主党の基本となり保守からはリベラルと批判されるようになる。

このニューディール体制派は、1960年代終わり頃まで続いたとされている。この体制の末期には、平等に傾きすぎたために健全な競争が行われず社会が停滞していた。行き過ぎた平等主義により人々は働くことに意欲を見出せず共産主義のような社会になってしまったのだ。その上、冷戦での核の恐怖、食糧危機、公害問題と未来に希望を見出せなくなっていた。だから、ディストピア的なSF映画が乱発した。

この作品でも、アメリカが重要なことを握っているようなので、これらの考えも読み解くためのヒントになるだろう。

この作品の著者について調べていたら、面白いエピソードがあったので、書いておこう。著者は、高野和明という人。岡本喜八という映画監督のもと助監督として関わっていたことがあるそうだ。そのエピソードを知って、より一層ワクワクしている。なぜなら、岡本喜八の「殺人狂時代」という映画が好きだから。まだ、わずかしか読んでいないが、「ジェノサイド」は、岡本喜八的な匂いがどことなくする。

 

 

アイリスさんにとって、本を読む喜びは、その物語の世界観に没入し気付くと時間を忘れてしまうことが出来るからと言っていた。この作品だったら、僕もそうなることが出来そうだ。

 

本の行方


 

  • アイリス→そのちゃん