「氷点 (上)」 (角川文庫) 三浦 綾子 (著)


~紹介した「W」(女性)さんの記録~
(2015年11月1日読書会にて)

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主催者の感想というか勝手な妄想というか戯言


この本は、交換して自分の元へとやってきたもの。頂いたのは上巻だが、後で下巻を購入し全て読み終えることができた。

そういえば、上巻を読み終えたときtwitterで感想を呟いていた。

あらすじはこんな内容である。

内容(「BOOK」データベースより)
辻口病院長夫人・夏枝が青年医師・村井と逢い引きしている間に、3歳の娘ルリ子は殺害された。「汝の敵を愛せよ」という聖書の教えと妻への復讐心から、辻口は極秘に犯人の娘・陽子を養子に迎える。何も知らない夏枝と長男・徹に愛され、すくすくと育つ陽子。やがて、辻口の行いに気づくことになった夏枝は、激しい憎しみと苦しさから、陽子の喉に手をかけた―。愛と罪と赦しをテーマにした著者の代表作であるロングセラー。

この作品に重くのしかかるのは原罪というキリスト教的概念である。

げん‐ざい【原罪】

キリスト教で、人類が最初に犯した罪。アダムとイブが禁断の木の実を口にし、神の命令に背いた罪。アダムの子孫である人類はこの罪を負うとされる。(デジタル大辞泉より)

夏枝はルリ子の死をきっかけに、辻口は陽子を引き取ったことをきっかけにしてそれぞれ原罪を負うことになる。しかし、下巻を読み終えるとその考えがひっくり返されて、読んでいる人、つまり読者ゆえの原罪があったことに気づかされる。

この「氷点」とストーリーは全く違うが、読者ゆえの原罪を考えると根幹が同じ構造の映画がある。

それは、「ミスティック・リバー(2003年、監督クリント・イーストウッド)」だ。

ジミー、ショーン、デイブの3人は少年時代、決して仲が良いわけではなかったがよく一緒に遊んでいた。ある日、いつものように3人が路上で遊んでいたところ、突然見ず知らずの大人たちが現われ、デイブを車で連れ去っていってしまう。ジミーとショーンの2人は、それをなすすべなく見送ることしか出来なかった。数日後、デイブは無事保護され、町の人々は喜びに沸くが、彼がどんな目にあったのかを敢えて口にする者はいない。それ以来3人が会うこともなくなった。それから25年後。ある日、ジミーの19歳になる娘が死体で発見される。殺人課の刑事となったショーンはこの事件を担当することになる。一方、ジミーは犯人への激しい怒りを募らせる。やがて、捜査線上にはデイブが浮かび上がってくるのだったが…。(allcinemaより引用)

※ここからは、この映画のネタバレになるが先に進む。

この映画は、観客はジミーとともにデイブが犯人だと断定してしまうだろう。だから、デイブがジミーに殺されてもしかたないと納得すらしてしまうだろう。

だが、違う。デイブは犯人ではなかった。この事実を観客は物語の終盤で知ることになる。

ジミーの娘を殺した本当の犯人を捕まえたをショーンは、ジミーがデイブを殺してしまった事実を知るが、最後のシーン(復活祭のパレードで人ごみの中で二人が対峙する)では逮捕せずに、ショーン指鉄砲でジミーを撃つ真似をして終わる。

物語の終盤で真実を知るわけだがそれまではジミー目線で明らかにデイブが犯人であろうという描かれ方をしている。

これはジミーにとって都合のいい情報でありそれしか知るすべがない観客にとっても都合のいいものである。

都合のいいということは、100%そうであるという確信がないことを意味し”そうであろう”という期待が含まれる。

こうさせるのは”感情”という動機があるからで、この動機は負の側面で言えば多くの過ちを起こすことがある。

これを利用することで”観客(=読者)は原罪を負う”ことになる。

このことは実生活にも起こりうることだ。

絶対にそうに違いないと思っていたとしても、その根拠は何なのか、感情に比重がのっていないかと考えると、過去をねつ造してしまっている場合があるだろう。

「過去は変えられる未来であり、未来は変えられられない過去」だ。

この抗い難き繰り返しの中で、”原罪を負う”とはなんなのか、そして”生きること、死ぬこと”とはなんなのか、かなり抽象的な言い回しになってしまったが、この作品を通じて考えさせられたことである。

ちなみに、「続・氷点(上下)」も発売されているが、まだそちらは読んでいない・・・・・。

おわり

本の行方


W→→→→→みずしま
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