「昭和芸人 七人の最期」(文春文庫)笹山 敬輔(著)


~紹介した「みずしま」(男性)の記録~
(2016年07月23日読書会にて)61nmfdkdtzl
内容(「BOOK」データベースより)
笑いの裏側にある悲哀の晩年。「同情されたらおしまい」が口癖のエノケン、浴びせられる悪口を日記に残すロッパ、選挙落選で人気も急落した石田一松、コンビ再結成を夢みたエンタツ…。先輩芸人の見事な最期を語った伊東四朗インタビューも収録。ただ消え去ることを許されなかった、七人の男たち。文庫書き下ろし傑作列伝。

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この本を読んでという紹介するにあたっていろいろ書いたので・・・・・


この本で、ビブリオバトルに前回に引き続き出たので、そのときに書いたものがあるので張り付けておきます。このビブリオバトルはテーマは自由だったので、最近読んで面白かった本を紹介した感じです。

 

人生山あり谷ありなんていいますが、登った山が高ければ高いほどその落差は大きくなるのでしょう。

そのように考えさせられたのが、今回紹介するこちらの「昭和芸人7人の最期」という本を読み終えてです。

冒頭、このように書かれています。

お笑い芸人は、他の芸能に比べて、晩年を穏やかに生きることが難しい。歌手は、ヒット曲がでなくなっても、歌が下手になったとは言われない。

(中略)

だが、芸人は人気を失ったとき、即座に「面白くなくなった」という評価が下る。しかも、お笑いには、観客の笑い声という明らかな指標がある。どれだけ自分をだまそうとしても、笑い声のない客席を前にしては誤魔化しが利かない。笑わせることができなくなった芸人には、逃げ道がないのである。

笑いによって、一時代を築きまたたくまに凋落していった7人の昭和芸人について詳細に書かれています。

登場するのは、エノケン、ロッパ、エンタツ、一松、シミキン、金語楼、トニー谷。彼らはみな、戦争を生き抜いた世代で、そこから目まぐるしく移り変わる社会を体験し、その時代の波に乗れず人気がなくってしまった人たちといってもいいでしょう。

この本の冒頭に取り上げられているのが、エノケンこと榎本健一です。彼は、戦前から舞台で活躍していた喜劇役者。一躍人気者となれた理由は、それまでと違った新しさがあったからです。その新しさとは、「ジャズ・ソング」を取り入れたリズムに「スピード」の早い身のこなしだったそうです。

そのこの本の魅力は、ただたんにその人物をとりあげることだけでなく、お笑いの歴史をひも解いてくれるところにあります。

例えば、エノケンの新しさ、笑いをスピーディーにさせたということから、漫才の歴史もそうであったと述べています。1980年~1982年にかけて起こった漫才ブーム。ここから瞬く間に人気になったビートたけしの言葉が引用されています。

おいらのときは、漫才のスピードをそれまでの倍にした。B&Bとツービートでジャンジャンジャンジャン速くした。それまでに漫才をしていた人たちの倍は速くしゃべって、そこに何倍もギャグを詰め込んだ。(『間抜けの構造』)

そして、この「スピード」という価値観は、現在の漫才にも受け継がれています。ウーマンラッシュアワーなんかがそうでしょう。

エノケンの場合は、喜劇役者だったので、喋りのスピードではなく、持ち前の運動神経を生かした体のスピードです。ただ、この体を使ったスピードというのが、衰えとともに発生した病気により命取りとなってしまいます。終戦後の、昭和25年、左足が突発性脱疽という病気にかかり強烈な痛みを伴うようになりました。こちらは、薬により治ったそうなのですが、その2年後に右足が同じ病気にかかってしまいました。病状は悪化しており、右足切断とまで言われたそうですが、なんとか右足のつま先部分のみの切断で免れたそうです。しかし、それから、約5年後の昭和32年、再び病状が悪化し、右足の膝から下の切断を余儀なくされます。

片足は、義足となったものの舞台に上がり続け昔と変わらない姿を見せようとしました。ですが、「スピード」と「ジャズ・ソング」に乗って軽やかに動くことは不可能で、かつてほどの笑いは起こらなかったそうです。

また、時代はかわり、若い人たちは、テレビで活躍する喜劇人に熱狂するようになってきます。

エノケンは、過去に固執し時代に対応しきれなかったため取り残され人気を失っていきました。この過去への固執、つまりプライドを曲げないというのがここで登場する7人の芸人すべてに当てはまることです。

このプライドというのがキーワードです。プライドを捨てないか捨てるか、栄光の余韻に浸りその時のように振る舞うか振る舞わないか、どちらもここで登場する7人の芸人たちは前者をとります。

そこで、別の選択をしていれば、別の生き方もできたのかもしれません。

芸人の性というか、自分自身で築きあげてきたものだからこそ、その芸の信念を曲げるというのは人生を否定することになるのでそうできなかったのでしょう。

笑っているほう、つまり我々観客は、常に受け身で新しいものに飛びつき笑えばいいだけです。

笑わせる側は、笑われなくなったらという恐怖と戦い、例え笑わせていたとしても実人生が笑える楽しいものだとは限らないのです。

この本を読んで、芸人の悲哀を知りました。

おわり

関連動画


本の行方


みずしま→→→→ふった
昭和芸人 七人の最期 (文春文庫)
笹山 敬輔
文藝春秋 (2016-05-10)
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