「春になったら苺を摘みに」 (新潮文庫) 梨木 香歩 (著)


~紹介した「まほ」(女性)さんの記録~
(2015年7月26日読書会にて)

61XSGBDPYAL まほ

主催者の感想というか勝手な妄想


読書会で持ち寄られた本は、出来る限り読もうとしているのですが、それ以外にも読みたい本が現れたりして、中々そうできないのが現状です。でも、この本は読むことが出来ました。

この本は、ワークシートにも書かれているように、”異文化への興味”を持つことが出来るものでした。

「理解はできないが、受け容れる」それがウェスト夫人の生き方だった。「私」が学生時代を過ごした英国の下宿には、女主人ウェスト夫人と、さまざまな人種や考え方の住人たちが暮らしていた。ウェスト夫人の強靭な博愛精神と、時代に左右されない生き方に触れて、「私」は日常を深く生き抜くということを、さらに自分に問い続ける―物語の生れる場所からの、著者初めてのエッセイ。(内容紹介より

ここにも書かれているように、ウェスト夫人を中心に著者が体験したエピソードが綴られています。

たいして、エッセイを読んだりはしていないのですが、こういった作品を読むとふと気づかされるというか、深く心に刻まれるような文章に出会えます。中でも印象的だった部分を紹介しましょう。

あるとき、吃音が強いジョンという青年と出会い彼との交流を持つようになりました。ジョンの外見はダスティンホフマンにそっくりで、必ずこれをしなければならないというような強いこだわりのある行動から、ダスティンホフマン主演の映画「レイマン」と印象が重なっていました。

その後、彼自身も、

”昨夜テレビでアスペルガー症候群(高機能自閉症)のことをやっていて・・・・・思ったんだ、わお、これって僕のことじゃないかって。”

(p211より)

このように、言ったそうです。

ここから、著者自身のアスペルガー症候群に対しての考えが書かれています。引用します。

「自閉症」と診断された人たちは、秩序に固執する。こんな不安定な世の中で、何か一つでも、普遍の確かさにすがりたいと思う。もうそれに存在の全てをかけていると言ってもいい。見ようによっては「根性がある」。日常の順番が一つでも狂ったら不安になってしまう。彼らに安心感を与えるのは慣れ親しんだパターンだ。

(中略)

世界に秩序を!

だが、この世は彼らが願っているような秩序を供給できない。普遍のたしかさなんてどこにもない、死以外は。彼らから見れば他人は次の行動が全く予測できない不可解な論理で生きている別次元の生物である。何を、自分がどう行動することを要求されているのかまったくわからない。恐ろしい。できるだけ関わり合いになりたくない。

(p214-215)

そして、ジョンとの会話を通じてこのように書かれています。

君はあちこち旅行するんだね、とジョンは言う。僕は、旅行は苦手だ、ほとんどこの街から出たことがない、一度ニューヨークに行ってひどい目にあった。それから彼はしばらく黙り込む。普通の人って何も言わなくても相手がどう感じているか、なんとなく察せられるんだよね、でも、僕はそれが出来ないんだ。

(中略)

でも私も察しはしても、いつも当たるとは限らない、とんでもない誤解をしているときもあるし。人と人とが本当に理解し合うなんてことはないんじゃないかな、と私は言う。

(p215-216)

この後に続く言葉が最も印象的でした。

まあ、それでも一緒にコーヒーは飲めるわけだし。

この言葉だけを取り出したら、なんてことない文章ですが、それまでの過程を加味して考えると、私だけかもしれませんがとても感慨深いものとして捉えることが出来ました。

最後の話で、ウェスト夫人とイスラーム人との交流について書かれています。ウェスト夫人は様々な生活上の違いから彼らのことを理解することが出来なかったそうです。著者目線でこのように書かれています。

ウェスト夫人は私の見た限り、彼らを分かろうと聖人的な努力を払っていた、ということは決してなかった。彼らの食べ散らかした後について、彼らのバスルームの使用法について、彼らの流す大音響の音楽について、いつも頭を抱え、ため息をつき、こぼしていた。自分が彼らを分からないことは分かっていた。好きではなかったがその存在は受け入れていた。

理解は出来ないが受け入れる。ということを、観念上だけのものにしない、ということ。

(p231)

この本は、2002年2月に刊行されたもので、2001年9月11日の悲劇について直接的ではありませんが、最後の章の「最近のウェスト夫人の手紙から―2001年末―」から感じ取ることが出来ます。

その章に入る前の文章が先ほど引用した部分なのですが、最後にこのように締めくくられています。

同時多発テロ事件のチャリティ・コンサートで、ニール・ヤングは放送自粛を叫ばれていた「イマジン」を歌った。

(p231)

ニールヤングは、私も好きな歌手なので、唐突にこの文章が現れたときにはドキッとしました。とやかく書かず、最後はこのニールヤングのイマジンで締めくくりたいと思います。

おわり

と、締めくくりましたが、最後に自分の好きなニールヤングの曲をどうぞ。

本の行方


まほ→→→→→中井

 

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